強迫性障害の2つの症状とは?原因や治療方法、なりやすい人の特徴も解説

日常生活の中で「鍵を閉めたか不安になり、何度も確認してしまう」「手洗いを何度も繰り返してしまう」などの行動に心当たりはありませんか。これらの行動が単なる習慣ではなく、強迫観念や強迫行為として繰り返され、日常生活に支障をきたしているなら、強迫性障害の可能性があります。
強迫性障害は、本人が無意味だとわかっていても、強い不安に駆られ、特定の行動を繰り返してしまう疾患です。発症すると社会生活や仕事に支障をきたし、精神的な苦痛が増大します。
本記事では、強迫性障害の2つの主要な症状、原因、治療方法、そして発症しやすい人の特徴について詳しく解説します。
監修
医療法人優真会 理事長
近藤匡史
順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。
強迫性障害とは
強迫性障害は、日常生活や社会生活に支障をきたすほどの強迫観念に駆られ、強迫行為を繰り返してしまう精神疾患です。例えば、カギを締め忘れていないか何度も確認する、過剰に手を洗う、特定の順番で物を並べないと不安になるなどの行動が見られます。
幼少期や青年期に発症する場合が多く、患者のうち40%は慢性の経過を辿ります(1)。本人は強迫行為が無意味だと自覚していても、やめることができず、日常生活に深刻な影響を及ぼすため、強迫行為を行わないようにするための治療が必要です。
強迫性障害の原因
強迫性障害の原因は大きく2つに分けられます。
- これまでの経験や行動
- 脳機能の異常
以下で詳しく解説します。
これまでの経験や行動
強迫性障害の発症には、幼少期の経験が大きく影響する場合があります。親が過保護だったり、厳しくしつけたりする家庭環境は強迫性障害の要因です(1)。特に、自分の行動に対して頻繁に怒られていた場合、間違いを犯してはいけないという強いプレッシャーを感じやすいです。
例えば、幼少期に「手を洗わないと病気になる」と何度も厳しく指導された子供は、不安を感じるたびに手洗いを繰り返すようになる可能性があります。こうした行動が習慣化すると、やがて強迫行為として定着し、過剰な確認や反復行動がやめられなくなります。また、親の期待に応えようとするあまり、失敗を避けようとする気持ちが強くなることも要因の一つです。
子供の性格にもよるため個人差はありますが、このような経験が積み重なることで、強迫性障害の発症リスクが高まります。
脳機能の異常
強迫性障害の原因には、神経学的要因が関与していると考えられています。行動を司る前頭葉や基底核、感情を司る大脳辺縁系の機能異常が原因で、強迫行為を引き起こしているという仮説があります。
例えば、何度も手を洗わないと気が済まない人は「汚染されている」という嫌悪感を過剰に抱いてしまい、強迫行為を繰り返してしまうというものです。
強迫行為を繰り返すことで記憶を司る海馬がそれを学習し、行動を強化してしまう可能性があります(2)。鍵を閉めたか不安になり何度も確認するうちに、「確認しないと不安が消えない」という回路が形成され、強迫行為が習慣化してしまうのです。
強迫性障害の症状
強迫性障害の症状として、以下の2つがあります。
- 強迫観念(考えが浮かんで中々消えない)
- 強迫行為(不安を消すためにする行動)
それぞれ詳しく解説します。
強迫観念(考えが浮かんで中々消えない)
強迫観念とは、不安や恐怖が頭から離れず、何度も繰り返し考えてしまう状態です。例えば、「ドアに鍵をかけたかな。」という不安が浮かぶと、その考えが頭にこびりつきます。無視しようとしても消えず、不安が増加しやすいです。そして、その不安を解消するために家に戻って鍵を確認する行動を取るようになります(強迫行為)。
一度だけなら神経質な性格の範囲かもしれませんが、何度も繰り返してしまう場合は強迫性障害の可能性があります。強迫観念が続くと、時間を無駄にするだけでなく、心身ともに疲弊してしまうため早めの治療が必要です。
強迫行為(不安を消すためにする行動)
強迫行為とは、不安を和らげるために繰り返し行う行動のことです。例えば、ドアの鍵を何度も確認する、手を何度も洗うなどが挙げられます。これらの行為をやめようとすると強い不安を感じるため、やめられずに日常生活に支障をきたします。
外出時に家の鍵を何度も確認すると、約束の時間に遅れてしまいます。また、仕事中に繰り返し手を洗うと業務が進まないです。これらの行動は、本人は無意味だと理解していても、不安を抑えられずに繰り返してしまうのが特徴です。
強迫性障害は、不安障害やうつ病と併発することが多く、日常生活が困難になることもあります。適切な治療を受けて症状を改善するのが大切です。
強迫性障害のチェックリスト
強迫性障害は、不安が頭から離れず、繰り返し確認や行動をしてしまう状態です。以下のチェックリストで、自分の状態を確認してみてください。
- 戸締りやガスの元栓を何度も確認しないと気が済まない
- 手を必要以上に洗い続ける(ばい菌が気になり、手が荒れてもやめられない)
- 同じ動作や言葉を繰り返さないと落ち着かない
(例えば、靴を左右順番に履く回数を決めている) - 大切な物が正しく配置されていないと不安になる
- 数字や順序にこだわり、特定の回数で行動を終えないと気が済まない
- 不吉な考えが浮かび、それを打ち消すために特定の行動をする
- 汚れや細菌への恐怖から、公共のものに触れるのを避ける
- 物事を完璧にしないと気が済まず、過度に時間をかける
- 些細なミスを極端に恐れ、何度もやり直してしまう
- 強迫観念や強迫行為で日常生活や社会生活に支障が出ている
これらの項目に多く当てはまる場合、強迫性障害の可能性があります。日常生活に影響を与えているなら、専門家に相談することをおすすめします。
強迫性障害の治療方法
強迫性障害の治療は2つあります。
- 薬物療法
- 心理療法
それぞれ解説します。
薬物療法
強迫性障害の治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択薬です。SSRIは脳内のセロトニン濃度を調整し、不安や強迫観念を軽減する効果があります。ただし、効果を得るには高容量が必要で、30〜50%の患者には十分な改善が見られていないです(2)。
SSRIが効かない場合、抗精神病薬を併用することが推奨されています。ただし、治療効果は個人差があり、環境要因や症状の重症度、ほかの精神疾患の有無も影響します。
また、副作用のリスクも考慮が必要です。SSRIは吐き気や眠気を伴うことがあり、抗精神病薬は、眠気、めまい、アカシジア、筋緊張異常を引き起こす可能性があります。薬物療法は主治医と相談しながら、慎重に進めることが大切です。
心理療法
暴露反応妨害法
暴露反応妨害法は、強迫性障害に対して有効な治療法とされています(3)。強迫行為をしたくなる状況に意図的に直面し、あえて強迫行為を行わずに不安が和らぐのを待つ方法です(4)。
例えば、手洗いの強迫行為がある人は、汚れが気になる状況に触れた後、すぐに手を洗わずにそのまま過ごします。最初は強い不安を感じますが、時間が経つと自然とその感覚が薄れていきます。これを繰り返すことで、強迫観念が生じても強迫行為に頼らずに済むようになるという治療です。
この治療の目的は、強迫観念から強迫行為に移行する悪循環を断ち切ることです。初めは強い抵抗感がありますが、少しずつ挑戦することで成功体験を積み重ねられます。
認知行動療法
認知行動療法は、強迫性障害の治療で広く用いられる心理療法です。「強迫観念が生じても、それに基づく強迫行為をしなくても不安は自然に軽減する」という考えに基づいています。
「手を洗わないと汚い、病気になる」という考えが浮かんだ際に、実際にはそんなことはなく、その考えは間違っていることを認識します。そして強迫行為を抑えることにより思考と行動の悪循環を断ち切るものです。
こうした治療を継続することで、強迫観念に振り回されることなく、日常生活を送れるようになります。
よくある質問
強迫性障害でよくある質問を紹介します。
- 強迫性障害になりやすい人の特徴は?
- 強迫行為・強迫観念を気にしないようにするには?
以下で詳しく解説します。
強迫性障害になりやすい人の特徴は?
強迫性障害になりやすい人の特徴として、真面目で神経質な性格が挙げられます。物事に対して完璧を求め、些細なミスを過度に気にする傾向があります。また、完璧主義者は何事も100%で完璧に行おうとするため、それがストレスや不安を招き強迫観念に至ることがあります。
強迫行為・強迫観念を気にしないようにするには?
強迫観念が浮かんだ時に一旦落ち着いて考えを切り替えるのが大切です。例えば、「ドアの鍵を閉めたか不安になる」場合、一度深呼吸し、「さっき確認したから大丈夫」と自分に言い聞かせてみましょう。最初は難しいかもしれませんが、気になっても放置してみると時間とともに不安が軽減していきます。
気にしない訓練として、あえて強迫観念を受け入れたまま別の行動をするのも有効です。たとえば、手洗いの回数が気になるなら「もう一度洗いたい」と思っても、他の作業を始めてみましょう。意識をそらすことで、次第にその考えが薄れていきます。
強迫観念を断ち切って症状を改善させましょう
強迫性障害は、強迫観念と強迫行為を特徴とする精神疾患で日常生活に大きく影響します。例えば「鍵を閉めたか」という不安が消えず、鍵を何度も確認して数時間経ってしまうなどの行動が挙げられます。
原因には、幼少期の厳しいしつけや過保護な環境が影響する心理的要因と、脳の機能異常による神経学的要因が考えられます。治療法には、薬物療法と心理療法があり、不安を軽減しながら強迫行為を減らす訓練を行います。
症状が日常生活に支障をきたす場合、精神科・心療内科を受診して適切な治療を受けることが重要です。
【参考文献】
