ADHDの治療方法とは?知らないと損する治療法と生活工夫で今日からできる改善策

ADHD(注意欠如・多動性障害)は「集中が続かない」「落ち着きがない」「衝動的に行動してしまう」といった特徴を持ち、子どもの頃から大人まで影響が続きます。こうした症状は勉強や仕事、人間関係で繰り返し困難を生み、自尊心の低下やうつ病など二次的な問題を引き起こしやすいです。
症状が軽ければ、スケジュール管理や環境調整など生活の工夫だけで十分安定する場合もありますが、症状が強いときには薬や行動療法を組み合わせることが必要です。この記事では、ADHDの具体的な治療方法や生活でできる工夫を紹介します。
監修
医療法人優真会 理事長
近藤匡史
順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。
ADHDとは
ADHD(注意欠如・多動症)は、発達障害のひとつで、「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特徴を持つ状態です。これらは通常、子どもの頃からあらわれ、生涯を通じてある程度持続するものです。
- 不注意:集中が続かず、宿題や細かい作業でミスが多い、忘れ物が多いなど
- 多動性:じっとしていられず、落ち着きがない、席を離れるなどの行動
- 衝動性:順番を待てない、思いついたことをすぐ口に出したり行動に移したりする
これら3つの症状すべてが同じ程度に出るとは限りません。
ADHDに治療は必要ない?
ADHDの治療は、すべての人に必ず必要というわけではありません。症状が軽く、学業や仕事、人間関係に大きな支障をきたしていない場合、また本人や周囲が困っていない場合には、薬物療法を行わず生活の工夫で十分対応できるケースもあります。
例えば、スケジュール管理を工夫したり、作業環境を整えたりすることで、日常生活を安定させられる人もいます。このように「診断=治療」ではなく、支援や工夫のみで生活が成り立つ場合もあるのです。一方で、不注意や衝動性によって勉強や仕事に繰り返し支障が出る、人間関係でトラブルが続く、自尊心の低下からうつ病や不安障害を併発している場合には専門的な治療が必要です。
ADHDの治療方法
ADHDの治療法を3つ紹介します。
- 環境調整
- 心理社会的治療
- 薬物療法
それぞれ解説します。
環境調整
ADHDの治療方法の一つに「環境調整」があります。まず視覚的な刺激を減らすことが重要です。机の上を整理し、壁の装飾を控え、不要な通知をオフにすることで集中力が高まります。次に静かな環境を選ぶことです。騒音や人の出入りが少ない場所で作業を行うと、注意の分散を防ぎやすくなります。加えて、時間管理ツールの活用も有効です。タイマーやアプリ、ToDoリストを使いタスクを明確にすることで先延ばしを防ぎ、計画的に行動できます。
刺激を減らす工夫や静かな環境の確保、時間管理支援は認知行動療法の一部として有効と報告されています(1)。こうした環境調整を取り入れることで、日常生活の困難が軽減し、作業効率や生活の質が改善することが期待されます。
心理社会的治療
大人のADHD(注意欠如・多動症)では、薬物療法だけでなく、日常生活での困りごとを改善するための心理社会的治療が重要です。その中でも「認知行動療法(CBT)」と「ソーシャルスキル・トレーニング(SST)」がよく用いられます。
| 内容 | |
| 認知行動療法(CBT) | 「考え方(認知)」と「行動」に働きかけ、困りごとを整理し、少しずつ改善していく方法です。 |
| ソーシャルスキル・トレーニング(SST) | 対人関係でのやりとり(話す/聞く/協力する/断るなど)や社会的ルールを学び、練習する方法です。 |
上記の治療を実施して、日常生活を送りやすくしていきます。
薬物療法
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状には、「不注意」「多動」「衝動性」があり、薬物療法はこれらを緩和するための有効な治療法のひとつです。薬を使うことで、集中力が上がる、不注意なミスが減る、落ち着きが出るなど日常生活での困りごとが軽くなる場合があります。
| 内容 | |
| 中枢神経刺激薬 | もっともよく使われる薬で、例えば「メチルフェニデート」があります。脳内の神経伝達物質(特にドーパミンやノルアドレナリン)の働きを調整し、不注意や多動に効果的です(2)。 |
| 非中枢神経刺激薬 | 刺激薬より依存リスクが低い、効果が遅く表れるなどの特徴があります。代表的なものが「アトモキセチン」です。ADHDの中隔症状に対して効果があり、刺激薬があまり効かない方などで使用されます。 |
上記の薬剤を使用してADHDの症状を軽減します。
ADHDの人ができる工夫
ADHDの人が出来る工夫では「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに対する方法があります。それぞれの内容を以下で解説します。
不注意に対する工夫
ADHDの方は注意が散漫になりやすく、物事に集中し続けることが難しいといわれています。そのため、日常生活や仕事で工夫を取り入れることが有効です。主に3つの方法があり、そのメリットについて表を用いて解説します。
| メリット | |
| タスクを小分けにする | 大きな課題を一度に取り組むと途中で集中が途切れやすいため、細かいステップに分解することで達成感を得やすくなります。こうした「タスクの小分け」がADHDの不注意軽減に効果が期待されます(3)。 |
| リマインダー活用 | スマートフォンのアラームやToDoアプリを使えば、予定ややるべきことを忘れにくくなります。こうしたツールを使いながら時間管理スキルを高めることで、不注意や記憶の症状が改善したという結果も報告されています(4)。 |
| 視覚化 | 付箋やホワイトボードにタスクを書き出し、常に目に入る場所に置くことで注意を向けやすくなります。視覚優位の特性を活かした視覚的手掛かり(カレンダーや目印、ラベルなど)」を設置することが、家事や育児など日常の遂行能力を改善するのに役立ったという事例があります(5)。 |
このような工夫を取り入れることで、日常生活の困難さを軽減しやすくなります。
多動性に対する工夫
多動性に対する工夫をいくつか紹介します。
| 内容 | |
| 短時間の休憩 | 作業を25分行い、そのあと5分休憩をはさむ「ポモドーロ法」がよく使われます。短い集中時間を区切ることで、「さあ始めよう」というハードルが低くなり、休憩で気持ちと体をリセットすることで多動からくる疲れや苛立ちが軽くなります。 |
| 身体を動かす | 軽い運動やストレッチを定期的に取り入れることが多動性の発散につながります。たとえば、朝起きた直後・昼食後・作業の合間などにスクワットやストレッチを2〜3分行うだけでも効果があります。運動は集中力の回復にも役立つため、座っての作業の合間に体を動かす習慣を作ると、後半の効率も上がります。 |
| 落ち着ける環境を作る | 静かな部屋、余計なものが視界に入らない机の上、耳栓やノイズキャンセリングヘッドホン、照明を調整するなど環境を整えることで、身体が落ち着きやすくなります。視覚・聴覚の刺激を最小限にすることで、脳が「今やるべきこと」に意識を向けやすくなります。 |
このような工夫をすることで、多動性の症状を抑えやすくなります。
衝動性に対する工夫
ADHD(注意欠如・多動性障害)の人は、「思いついたことをすぐ口にしてしまう」「相手の話が終わる前に発言してしまう」など、衝動性が日常でトラブルになりやすいです。このような状況で、「発言前に深呼吸して3秒待つ」習慣をつけると、自分の思考を整理でき、言いたいことを選んで話す余裕ができます。研究でも、大人のADHDに対する認知行動療法や行動面への介入で、「話す順番を待てるようにする」「質問が終わるまで発言を控える」などの練習が有効であったとの報告があります(1)。
よくある質問
ADHDにおすすめの食べ物は?
主に、チロシン、亜鉛、鉄分、オメガ3脂肪酸などが含まれる食べ物が脳や神経に良いとされています。具体的な作用を以下で解説します。
| 内容 | |
| チロシン |
チロシンは、ドーパミンやノルアドレナリンという神経伝達物質の材料となります。これらは「集中力」「注意力」「意欲」に深く関係しているため、十分なチロシンを食事で取ることはADHDの注意力改善に関与する可能性があります。 例)鶏肉・牛肉・魚・大豆製品など |
| 亜鉛 |
亜鉛はドーパミン系の機能を助け、注意力の低下や多動性・衝動性といったADHDの特徴を改善する可能性があります。 例)牡蠣、レバー、カシューナッツ |
| 鉄分 |
鉄は脳でのドーパミン生成に関わるなど、神経伝達の材料として重要です。不足すると注意力や行動の安定に影響がでるとの報告があります。実際に鉄の摂取不足がADHDのリスク要因の一つとして挙げられています(6)。 例)レバー、ほうれん草、大豆製品、海藻類 |
| オメガ3脂肪酸 |
オメガ3脂肪酸は、脳の細胞膜を構成する脂質の一部であり、神経細胞の健康を保つのに役立ちます。研究では、ADHDの人では血中や赤血球膜で不飽和脂肪酸の低さが観察され、DHA欠乏が注意力や衝動性、攻撃性の増加と関連しているとの報告があります(7)。 例)青魚、アマニ油、えごま油、くるみ |
ADHDは完治する?
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、「脳の発達の特徴」に起因するものであり、完治することは難しいとされています。なぜなら、先天的な神経発達の傾向や遺伝的要素が強く関与しており、それを一度消してしまうことはできないからです。
ADHDの治療で過ごしやすい日常を送りましょう
ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」という特徴を持つ発達障害で、子どもから大人まで続くことがあります。すべての人に治療が必要なわけではなく、生活や学業に大きな支障がなければ環境調整や生活の工夫だけで対応可能です。
例えば、机や作業環境を整える、予定を細かく管理する、休憩や運動を取り入れるといった工夫が有効です。一方で症状が強く、学業や仕事、人間関係に大きな影響を及ぼす場合には、行動療法や薬物療法を組み合わせることが推奨されます。薬物療法では中枢神経刺激薬や非刺激薬が用いられ、集中力や衝動のコントロールを助けます。ADHDは完治するものではありませんが、適切な支援と治療によって日常生活を過ごしやすくすることができます。
【参考文献】
