双極性障害(躁うつ病)

双極性障害の症状とは?躁状態・うつ状態・混合状態の症状、うつ病との違いも解説

「気分の浮き沈みが激しい」「気分が高揚した後に極端に落ち込む」などの症状がある場合、それは単なる気分の波ではなく、双極性障害かもしれません。

双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す疾患です。特に、うつ状態だけが続く時期には、うつ病と間違えやすく、誤った自己判断をしてしまうケースもあります。双極性障害の症状を正しく理解し、躁状態・うつ状態・混合状態の特徴を知ることが、適切な治療への第一歩です。

本記事では、双極性障害の症状や特徴を詳しく解説し、うつ病との違いについても分かりやすく説明します。自身や身近な人の状態を正しく理解し、適切な治療につなげましょう。

監修

医療法人優真会 理事長
近藤匡史

順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。

双極性障害とは

双極性障害は、気分が高揚する躁状態と落ち込むうつ状態が繰り返し現れる疾患です。各期の特徴は以下の通りです。

躁状態
  • 異常に気分が高まり、活動的になる
  • 睡眠時間が減っても疲れを感じにくく、判断力が低下するため、無謀な行動を取る場合がある
  • 多弁になり、考えが次々と浮かぶため、話がまとまりにくい
うつ状態
  • 気分が沈み、意欲が低下する
  • 興味や喜びを感じにくくなり、集中力が落ちる
  • 食欲や睡眠に変化が生じ、強い倦怠感を伴うことが多い
  • 自責感や無価値観が強まり、自殺念慮を抱くこともある

双極性障害のうち、激しい躁状態と鬱状態を繰り返すものを「双極Ⅰ型」、軽い躁状態とうつ状態を繰り返すものを「双極Ⅱ型」と言います。このような違いがあり、同じ双極性障害でも症状が異なる場合があります。

双極性障害とうつ病の違い

双極性障害はうつ状態と躁状態を繰り返しますが、うつ病はうつ状態のみが見られる疾患です。双極性障害の躁状態では、気分の高揚や活動の増加が顕著になり、過剰な自信や睡眠不足でも疲れを感じないことがあります。一方で、うつ状態では意欲の低下や抑うつ気分が続き、日常生活に支障をきたします。

うつ病は持続的な抑うつ気分と興味の喪失が主な特徴で、慢性的に気分が沈み込む状態が続きます。双極性障害と異なり、気分が高揚することはありません。治療方法も異なり、うつ病には抗うつ薬が用いられますが、双極性障害には気分安定薬や抗精神病薬が処方されるのが一般的です。症状も治療方法も異なるため、適切な診断を受けるのが大切です。

双極性障害の3つの症状

双極性障害の症状は3つあります。

  • 躁状態
  • うつ状態
  • 混合状態

詳しく解説します。

躁状態

躁状態の症状は、高揚感、多弁、活動量の増加、睡眠時間の減少、衝動的な行動、自己過大評価などが挙げられます。それぞれ日常の中ではどのような例があるか紹介します。

日常場面での例
高揚感 「自分は特別な使命を持っている」と確信する
突然、大規模なプロジェクトを始める
多弁 知らない人にも話しかけて延々と話し続ける
会議や食事中に一方的に話し続ける
活動量の増加 1日中外出し、複数のイベントに参加する
家の掃除を始めたら止まらなくなる
睡眠時間の減少 2〜3時間の睡眠でも疲れを感じない
深夜に急に活動を始める
衝動的な行動 高級ブランド品を大量購入する
退職して起業すると突然決意する
自己過大評価 「自分は世界的な成功者になれる」と思い込む
投資やビジネスで必ず成功すると信じる

上記のような症状が見られます。躁状態が続くと、周囲とのトラブルや経済的な問題を引き起こすため、適切な治療を受けることが重要です。

うつ状態

双極性障害のうつ状態では、気分の落ち込みや活動意欲の低下が見られます。日常生活に支障をきたし、普段できていたことが難しくなることもあります。以下のような症状が現れることが多いです。

日常場面での例
無気力
  • 何をする気にもなれず、ベッドから出られない
  • 好きだった趣味にも関心が持てない
食欲の変化
  • 食べる気が起きず、1日何も口にしない
  • 過食が続き、短期間で体重が増える
自己否定
  • 自分は価値がないと感じる
  • 小さなミスで「自分は無能だ」と思い込む
自殺念慮
  • 未来に希望を持てず、消えたいと思う
  • 遺書を書いたり、身辺整理を始める

躁状態からうつ状態への急激な気持ちの変化はさらに気分を低下させる要因にもなります。薬物療法や心理療法を用いて症状を安定させるのが大切です。

混合状態

双極性障害の混合状態とは、躁状態と抑うつ状態が同時に現れている状態です。多幸感や過剰な自信といった躁の特徴がある一方で、不安や絶望感といった抑うつの要素も見られます。

例えば、頭の中が次々と考えで埋め尽くされ、行動したい衝動が強いにもかかわらず、気分は沈み無力感を抱えるなどです。また、焦燥感が強まり、イライラや攻撃的な言動が増えることもあります。思考が混乱し、自分を責める気持ちが高まると、自傷行為や自殺のリスクも上がります。

混合状態は躁状態やうつ状態のみより危険な状態であるため、適切な治療やサポートを受けるのが大切です。

双極性障害の症状を簡単にチェック

双極性障害の躁状態とうつ状態に当てはまっているかチェックしてみましょう。躁状態と鬱状態でどちらも多くあてはまっている場合に、双極性障害が疑われます。

躁状態のチェック

  • 気分が異常に高揚し、活動的になりすぎることがある
  • 睡眠時間が短くても疲れを感じにくい
  • 話が止まらず、考えが次々に浮かんでくる
  • 注意散漫になり、計画性のない行動が増える
  • 無謀な買い物やギャンブルなどの衝動的な行動をとる

うつ状態のチェック

  • 気分が極端に落ち込み、何をする気も起きない
  • 自己評価が極端に低く、罪悪感に苛まれることがある
  • 日常生活に支障をきたすほど集中力が低下する
  • 食欲が大きく変化し、体重が急激に増減する
  • 死について頻繁に考えることがある

上記の項目に当てはまったからと言って確実に双極性障害とは言い切れません。「もしかしたら双極性障害なのかもしれない」と不安を感じたら、当院へご来院ください。

双極性障害の治療方法

双極性障害の治療は2つあります。

  • 薬物療法
  • 心理療法

それぞれ解説します。

薬物療法

薬物療法では、気分安定薬としてリチウムやバルプロ酸、ラモトリギン等を処方します(1)。一方、抗精神病薬としてクエチアピン、リスペリドン、アリピプラゾールが用いられます。それぞれの薬剤の効果や副作用は以下の通りです。

効果と副作用
リチウム

気分安定薬として用いられ、躁状態やうつ状態の症状軽減に効果があります。中枢神経に作用して気分を安定させます。

副作用:甲状腺機能低下、腎機能障害、吐き気や下痢など

バルプロ酸

躁状態に効果的な気分安定薬です。脳内のGABA濃度を維持、増加させることで神経の興奮を抑えます。

副作用:傾眠、頭痛、食欲不振、倦怠感など

ラモトリギン

比較的に新しい気分安定薬で、主にうつ病相にある方に使用されることが多いです。特に意欲低下への効果が期待できます。

副作用:発疹、傾眠、胃腸障害など

クエチアピン

うつ状態の軽減に効果的な抗精神病薬です。脳内のドパミンやセロトニンに作用して働き、症状を改善します。

副作用:不眠、傾眠、アカシジア、体重増加、便秘など

リスペリドン

リスペリドンは躁状態の改善に効果的な抗精神病薬です。ドパミンやセロトニンの働きを抑えることで気分の高揚を抑えます。

副作用:食欲不振、不眠、アカシジア、めまい、ふらつきなど

アリピプラゾール

アリピプラゾールは双極性障害のうつ状態と躁状態に効果的な抗精神病薬です。ドパミンやセロトニンに働いて症状を軽減します。

副作用:不眠、傾眠、アカシジア、振戦、体重増加など

気分安定薬と抗精神病薬を併用する場合もありますが、副作用には注意が必要です。上記の薬剤を用いたが効果がでない場合、カルバマゼピンやオランザピンなどの使用を検討します。当院では精神科専門医が病状を把握しつつ、慎重な投薬調整を行っておりますのでご安心ください。

心理療法

双極性障害の治療では、薬物療法に加えて心理療法・心理的な支援を行うと、再発率の軽減や生活の質向上といったメリットがあります(1)。心理療法には、認知行動療法や対人関係療法などの専門的な治療があり、症状の管理やストレスへの対処を学ぶものです。認知行動療法では、否定的な思考パターンを修正し、感情のコントロールを強化します。対人関係療法では、人間関係の改善を通じてストレスを軽減し、症状の悪化を防ぎます。

また、自助グループとのつながりを作ることも有効です。同じ悩みを持つ人と交流することで、孤独感が和らぎ、病気への理解が深まります。家族のサポートを受けながら、病気との向き合い方を学ぶことも大切です。日常生活のリズムを整え、十分な睡眠を確保することも、再発を防ぐ要因となります。

よくある質問

双極性障害で疑問を持たれやすいことには以下の2つがあります。

  • 双極性障害になりやすい性格は?
  • 双極性障害は自力で治せる?

詳しく解説します。

双極性障害になりやすい性格は?

気分の波が大きい、ストレスに敏感、完璧主義な人は双極性障害になりやすい傾向です。ただ、性格が原因になるわけではありません。他にも遺伝的要因、生活環境なども影響します。

双極性障害は自力で治せる?

双極性障害を自力で治すのは難しいです。この疾患は気分の波が大きく、抑うつ期と躁状態を繰り返します。症状が重くなると、日常生活や仕事に支障をきたすこともあります。自己判断での対処は、適切な治療を遅らせる原因になります。

双極性障害の症状を理解して適切な治療を受けましょう

双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。躁状態では気分が高揚し、活動的になりすぎる一方で、判断力が低下し衝動的な行動をとる場合があります。うつ状態では、極度の無気力や自己否定が強まり、日常生活に支障をきたします。また、躁とうつが同時に現れる混合状態では、不安や焦燥感が増し、自傷や自殺リスクが高いです。

双極性障害は、うつ病と異なり気分の波が特徴的です。うつ病は抑うつ状態のみが続くのに対し、双極性障害では躁状態が見られる点が決定的な違いです。

治療には気分安定薬や抗精神病薬が用いられ、心理療法も有効です。自力での治療は難しく、適切な診断を受けることが重要です。「もしかしたら双極性障害かも」と不安を感じる場合、心療内科を受診しましょう。

【参考文献】

  1. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023