双極性障害(躁うつ病)

双極性障害で休職を考えるべきサインと休職までの流れを解説

「仕事の集中力が続かない」「感情の波が激しくミスが増えた」そんな不調が続いているのは、双極性障害のサインかもしれません。躁状態では気分が高揚し、仕事量を増やしすぎてしまいます。一方、うつ状態では無気力や倦怠感が強まり、出社すらつらくなってしまうでしょう。こうした症状を「気の持ちよう」と我慢し続けると、再発や長期離職につながる恐れがあるため、休職することも必要です。

この記事では、双極性障害が仕事に及ぼす影響、休職を検討すべきサイン、診断書取得から傷病手当金申請までの流れ、復職までのステップをわかりやすく解説します。

監修

医療法人優真会 理事長
近藤匡史

順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。

双極性障害で仕事に影響が出る理由とは?

双極性障害とは、気分が高揚する「躁状態」と落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。躁状態では気分が異常に高まり、睡眠を取らずに活動したり、仕事量を増やしすぎたりする傾向があります。一方、うつ状態では強い無気力や集中力の低下がみられ、業務への意欲が湧かず、ミスや遅刻が増えることも少なくないです。

このように気分の波が激しいため、職場でのパフォーマンスや人間関係に影響が出やすくなります。症状を放っておくと職場での評価が下がり、キャリア形成に影響するため早めに治療するのが良いでしょう。

双極性障害で休職を考えるべきサイン

双極性障害では、症状の波が仕事に大きな影響を及ぼします。特に次のようなサインに多くあてはまったら、無理を続けず休職を検討することが大切です。

  1. 感情の浮き沈みが激しく、業務に集中できない
  2. 睡眠のリズムが乱れ、朝起きられない
  3. 仕事のミスが増える
  4. 上司や同僚との関係が悪化する
  5. 極端に自信過剰または自己否定的になる
  6. 衝動的な言動が増える
  7. 倦怠感が抜けず体調不良が続く
  8. 出社すること自体に強い不安を感じる
  9. 涙もろくなったり怒りっぽくなる
  10. 趣味や食事への興味がなくなる

これらのサインを我慢し続けると、躁状態やうつ状態が悪化し、回復に時間がかかる恐れがあります。無理をせずに休んでみるのも大切です。休職は「逃げ」ではなく、再び自分らしく働くための大切な治療の一環です。

双極性障害で休職するまでの流れ

双極性障害によって気分の波が激しくなり、仕事に集中できなかったり、人間関係や業務に支障が出てしまうことがあります。無理を続けると症状が悪化するケースも少なくありません。休職は「逃げ」ではなく、治療を進めるために必要な選択肢の一つです。ここでは、双極性障害の人が休職に至るまでの具体的な流れを解説します。

① 医師に相談して診断書を発行してもらう

双極性障害の症状が続き、仕事への影響を感じ始めたら、まず心療内科や精神科を受診しましょう。受診時には、気分の変動の頻度や仕事中の支障、睡眠の乱れなどを具体的に伝えることが大切です。医師が「就労困難」と判断した場合は、休職のための診断書を発行してもらえます。この診断書には「休養を要する期間」が記載され、会社への正式な休職申請に必要です。

② 会社に休職の意向を伝える

診断書を受け取ったら、直属の上司または人事担当者に休職の意向を正式に伝えます。口頭だけでなく、診断書を添えて文書やメールで報告するのが望ましいです。会社によっては休職申請書や医師の意見書が必要な場合もあるため、就業規則を確認しておきましょう。大企業では産業医が面談を行い、休職の可否や期間を判断するケースもあります。

休職の意向を伝えると、おそらく人事部門から給与や社会保険に関する説明があるのでしっかり聞いておきましょう。

③傷病手当金の申請

健康保険に加入している場合、休職中に給与が支払われないときは傷病手当金(最長1年6ヶ月)を申請できます。申請には、医師、会社、本人の記入が必要な書類を揃えて、健康保険組合に提出します。申請から支給までに1〜2か月かかる場合もあるため注意しておきましょう。

双極性障害の休職中に利用できるお金の制度

双極性障害で休職する際、経済的な不安は大きなストレス要因になります。治療に専念するためにも、利用できる公的・社内の支援制度を知っておくことが大切です。主な制度には、健康保険から支給される「傷病手当金」、一定の条件を満たすと受け取れる「障害年金」、そして企業や公務員などで用意されている「会社独自の休職制度」があります。以下で、それぞれの制度の特徴や申請方法をわかりやすく解説します。

① 傷病手当金(社会保険加入者)

傷病手当金は、社会保険に加入している会社員が病気やけがで働けなくなった際に支給される手当金です。双極性障害が原因で休職する場合も対象となります。具体的な支給条件や支給額は以下の通りです。

 

項目 内容
支給条件 業務外の病気やけがで連続3日以上仕事を休み、4日目以降も就労不能な場合
(最初の3日間は待期期間と呼ばれ、支給対象外です)
支給額 支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日 × 2/3
支給期間 最長1年6か月
必要書類 傷病手当金支給申請書(本人・会社・医師の記入欄あり)
必要に応じて添付書類(給与明細や本人確認書類など)

申請から支給までに1か月以上かかる場合があるため、休職が決まったら早めに申請に取り掛かりましょう。

② 障害年金

双極性障害の症状が長期間続き、社会生活や就労に支障がある場合には、障害年金の対象となることがあります。診断書や病歴・就労状況等申立書を提出し、障害等級に応じて支給額が決まります。

項目 内容
支給条件
  • 初めて医師の診察を受けた日(初診日)に公的年金に加入しているか
  • 直近1年間に未納がないか
  • 初診日から1年6か月経過した日、または治療が固定した時点を障害認定日とし、その時点で定められた障害等級(1級・2級・3級)に該当しているか
支給額 障害基礎年金
 1級:月約85,000円
 2級:月約68,000円
障害厚生年金:報酬により変動
支給期間 原則として障害の状態が続く限り(定期更新あり)
必要書類 診断書
年金請求書
病歴・就労状況等申立書
戸籍・住民票

休職し始めには申請できませんが、傷病手当金の最長支給期間が近づいても休職が続いている場合に検討しましょう。

③ 会社独自の休職制度や福利厚生

大企業や公務員では、法定制度に加えて独自の休職支援が整備されている場合があります。たとえば、休職延長制度や分離休職制度、復職支援プログラムなどが代表的です。これらは企業によって内容や期間が異なるため、必ず人事部や労務担当に確認することが大切です。制度をうまく活用することで、収入の減少を最小限に抑え、安心して治療に専念できます。

復職までの流れ

双極性障害からの復職は、「体調が落ち着いたから職場に戻る」という単純な話ではありません。焦りから早期に復帰してしまうと、再発や再休職のリスクが高まるため、主治医・会社・自分自身の三者で慎重に進めることが大切です。ここでは、職場復帰に至るまでの流れを紹介します。

①主治医と相談して復職計画を立てる

「体調が安定してきた=すぐに働ける」というわけではありません。双極性障害では、表面的に元気に見えても、集中力やストレス耐性がまだ回復していないことがあります。主治医のもとで、睡眠リズム・気分の安定・業務への意欲などを総合的に確認し、段階的な復職スケジュールを立てることが重要です。医師から「就労可能」と判断されて初めて、正式な復職が可能です。無理をせず、焦らず、長く働き続けられる状態を目指しましょう。

② 会社との面談・リワーク支援を受ける

主治医の許可が出たら、次は会社との復職前面談に進みます。この面談では、仕事内容や勤務時間、通勤負担などを具体的に調整し、スムーズな復帰に向けた環境を整えます。また、復職支援プログラムを活用することで、出勤リズムを整えたり、ストレス対処の練習を行えます。通院中の心療内科や地域の就労支援機関が提供している場合が多く、実際の職場環境に近い形で段階的に慣れていけるため、再発予防にもつながります。

心療内科・精神科への相談を検討している方へ

春日井こころのクリニックでは、心の不調や職場でのストレスに悩む方に寄り添い、初診時には丁寧な聞き取りを行っています。「職場でミスが増えた」「気分の波が激しい」「出勤がつらい」といった具体的な困りごともじっくりお伺いします。そのうえで、症状や生活環境に合わせた治療方針や、必要に応じて休職・復職を含めた計画を一緒に検討します。

予約は電話で受け付けております。心の不調を一人で抱え込まず、まずはご相談ください。