認知症の原因とは?なりやすい人の特徴と今日からできる予防策

「最近、物忘れが増えた気がする」「将来、認知症になるのではと不安になる」そんな悩みを感じていませんか。認知症は高齢者の病気という印象が強いものの、実際には加齢だけが原因ではありません。生活習慣病や喫煙、難聴など、多くの要因が発症リスクに影響します。
認知症は、気づかないうちに進行し、症状が表に出たときには生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。そのため、「年のせい」と放置することが、後悔につながる可能性があります。原因やリスク要因を正しく理解すれば、今日からでも対策が可能です。
本記事では、認知症の主な原因から、防ぐために大切な生活習慣、なりやすい人の特徴、よくある疑問までをわかりやすく解説します。
監修
医療法人優真会 理事長
近藤匡史
順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。
認知症の原因
認知症は単一の要因で発症する病気ではなく、複数のリスクが長年にわたり積み重なることで発症しやすくなる疾患です。なかでも加齢は最も大きな要因とされますが、それだけで必ず認知症になるわけではありません。
近年では、生活習慣病や喫煙、難聴など、日常生活と深く関わる要因が認知症の発症や進行に影響することが明らかになっています。これらの要因は中年期からの影響が大きく、早期からの対策が重要です。ここでは、認知症の代表的な原因について詳しく解説します。
加齢
認知症の有病率は、加齢とともに顕著に上昇します。65歳以降では年齢が5歳上がるごとに有病率がおよそ2倍になるとされ、加齢は認知症の最大のリスクファクターです。(1)。
これは、年を重ねることで脳の神経細胞が徐々に減少し、情報処理や記憶を担う機能が低下するためです。また、脳内にアミロイドβタンパクなどの異常なたんぱく質が蓄積しやすくなる点も関与します。ただし、加齢そのものが直接の原因というよりも、加齢に伴う脳の変化や疾患の蓄積が発症を助長すると考えられています。そのため、高齢であっても生活習慣や健康管理によって発症リスクを抑えることは可能です。
生活習慣病
糖尿病や耐糖能異常は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを2〜4倍高めると報告されています(1)。糖尿病では血糖値の変動が大きくなり、脳内でアミロイドβタンパクの蓄積が促される可能性があるためです。さらに、高血圧や脂質異常症も認知症と深く関係しており、これらの生活習慣病は脳血管障害や慢性的な脳循環障害を引き起こします。
特に老年期(65歳以上)よりも中年期(45〜65歳)の生活習慣病の影響が大きいことがわかっており、早期からの健康管理が重要です。(2)。アルツハイマー型認知症では、生活習慣病を合併している割合が高く、進行を早める要因にもなります(3)。
喫煙
喫煙は認知症の発症リスクを高める生活習慣の一つです。とくに中年期から老年期にかけて喫煙を継続している場合、老年期のみ喫煙している人よりも認知症の発症リスクが高くなります(4)。
喫煙により血管が収縮し、脳への血流が慢性的に低下することで、脳細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなるためです。また、喫煙は動脈硬化を進行させ、脳梗塞を引き起こすリスクも高めます。これらの影響が積み重なることで、血管性認知症だけでなくアルツハイマー型認知症の発症にも関与すると考えられています。そのため、禁煙は、認知症予防の観点からも重要です。
難聴
加齢性難聴は高齢者に多く、65歳以上で約22%、75歳以上では約55%に認められます。そのため、認知症と難聴を同時に抱えているケースは少なくありません。研究では、認知症の発症リスクは中等度難聴で約3.0倍、高度難聴で約4.94倍に上昇するとされています(5)。
これは、難聴により外部からの音刺激が減少すると、脳への情報入力が少なくなり、認知機能が低下しやすくなるためです。また、会話が困難になることで社会的孤立が進み、認知症の発症を助長する点も問題です。早期に補聴器などで聴力を補うことが、予防につながる可能性があります。
認知症を防ぐために大切なこと
認知症は加齢に伴い発症リスクが高まりますが、日常生活の工夫によってリスクを下げられる可能性があります。とくに運動や食事、趣味といった生活習慣は、脳の健康を維持するうえで重要な行動です。これらは特別な治療ではなく、誰でも今日から取り組める対策です。中年期からの積み重ねが将来の認知機能に影響するため、早い段階から意識しておきましょう。ここでは、認知症予防の観点から重要とされる生活習慣について解説します。
運動
運動は、記憶や学習を担う脳領域に良い影響を及ぼします(6)。とくに中強度以上の有酸素運動では、記憶形成に関与する海馬の容量が増加し、認知機能の維持や改善につながると考えられています。その背景には、脳由来神経栄養因子の発現が活性化され、神経細胞の成長や結合が促進される仕組みがあります。これにより情報処理能力や記憶力が保たれやすくなるのです。運動は特別なトレーニングである必要はなく、速歩きや自転車、水中運動など継続できる内容で十分です。無理なく習慣化することが、認知症予防では重要です。
食事
認知症予防には、抗酸化作用や抗炎症作用をもつ栄養素を意識した食事が有効と考えられています。具体的には、DHAやEPA、葉酸、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化・抗炎症作用をもつ栄養素が効果的です(7)。これらの栄養素は、魚介類、緑黄色野菜、果物に多く含まれているため、食事に取り入れることが大切です。複数の食品を組み合わせることで摂取できる栄養素の幅が広がり、結果として認知症予防につながります。
趣味
趣味を持つことは、認知症の発症リスクを下げる要因の一つです。趣味の数が多い人ほど認知症になりにくい傾向があると報告されています(8)。趣味活動には身体を動かす要素や考える要素が含まれ、脳への良い刺激となるためです。
また、人との交流を伴う趣味では社会的つながりが保たれ、孤立を防ぐ効果も期待されます。旅行やゴルフ、手工芸、園芸などは、身体的・認知的活動の両面を刺激するのにおすすめです。大切なのは内容の難しさではなく、楽しみながら継続することです。日常に楽しみを持つことが、脳の健康維持につながります。
認知症になりやすい人の特徴
認知症になりやすい人の特徴をいくつか紹介します。以下の内容に当てはまっているという方は、普段の生活習慣から改善してみましょう。
- 家にこもりがちで、外出の用事がほとんどない
- 会話の機会が少なく、1日中人と話さない
- テレビを長時間ぼんやり見て過ごしている
- 運動習慣がなく、移動はほぼ車か家の中だけ
- 同じ行動を毎日繰り返している
- 買い物や家計管理を他人に任せきりにしている
- 睡眠時間が短く、夜中に何度も目が覚める
- 難聴があっても補聴器を使わず放置している
- 食事が単調で、栄養バランスを意識していない
これらの多くが「脳を使って考えない」「外部からの刺激がない」ことに当てはまります。そのため、普段から様々なことを考え、多くの人と交流するような刺激のある生活が認知症予防には良いでしょう。
認知症に関してよくある疑問
認知症は精神疾患?
認知症は脳の器質的な疾患であり、精神疾患ではありません。ただし、認知症では妄想、幻覚、抑うつ、不安などの症状が現れることがあるため、精神疾患と間違われやすいです。認知症の可能性がある場合は、精神科、脳神経外科などを受診するのが一般的です。当院では物忘れ・認知症外来があります。物忘れや性格変化の症状で困っている方は、一度来院ください。
認知症と性格は関係ある?
外向性が低く、神経症傾向が高い人は認知症になりやすいです。外向性が低い場合、人との交流や社会的活動が少なくなり、脳への刺激が減少しやすくなります。また、神経症傾向が高い人はストレスを感じやすく、不安や抑うつ状態に陥りやすい点が特徴です。このような状態は、認知機能の低下を招くとされています。
認知症のリスク要因を早期から減らしましょう
認知症は、加齢を中心に、生活習慣病、喫煙、難聴など複数の要因が長年積み重なることで発症しやすくなる疾患です。加齢により脳の神経細胞が減少し、異常なたんぱく質が蓄積しやすくなりますが、高齢だから必ず発症するわけではありません。糖尿病や高血圧、脂質異常症は中年期からの影響が大きく、認知症の発症や進行を早める要因になります。また、喫煙は脳血流を低下させ、難聴は脳への刺激や社会的交流を減らすことでリスクを高めます。
これらの悪化要因を取り除き、運動、食事、趣味の3つを充実させるのが認知症予防で大切です。
【引用文献】
