統合失調症

もしかして統合失調症?幻覚や妄想の原因をわかりやすく解説

「自分の考えがまとまらない」「以前より感情が動かない」「周囲の音や視線が気になって不安になる」などの変化に心当たりはありませんか。統合失調症は、ある日突然妄想や幻覚が現れる病気と思われがちですが、実際にはその前から気づきにくい不調が続くケースも多いです。しかし、症状の正体がわからないまま放置すると、不安や混乱が強まり、日常生活に大きな支障が出てしまいます。

本記事では、統合失調症の症状や前兆、原因をわかりやすく解説します。今感じている違和感を理解する一歩として、ぜひ読み進めてください。

監修

医療法人優真会 理事長
近藤匡史

順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。

統合失調症の3大症状

統合失調症の代表的な症状は大きく3つあります。

  • 陽性症状
  • 陰性症状
  • 認知機能障害

それぞれ解説します。

陽性症状

陽性症状とは、幻覚や妄想など本来ない刺激を感じる症状です。陽性症状のうち幻覚では、周囲の人には聞こえない声が聞こえたり、自分の悪口を言われていると感じるケースが多いです。妄想では「誰かに見られている気がする」と強く感じます。

これは脳内のドパミンという神経伝達物質が過剰になり、普通の刺激でも特別な意味を持つように感じてしまうためです。本人の性格や意思の問題ではないため、自分でコントロールするのが難しい症状です。

陽性症状に伴う不安や恐怖が強くなると生活に大きな支障がでるため、早めに専門家に相談しましょう。多くの場合、薬物療法により症状を安定させられます。

陰性症状

陰性症状は、本来あった心の働きや行動が低下していく症状です。代表的なものに、感情が乏しくなる、意欲や興味が湧かなくなる、会話量が減る、人付き合いを避けるなどがあります。周囲からは「怠けているように見える」と誤解されやすいです。これは脳の前頭前野と呼ばれる意欲・計画・感情調節を担う部位の働きが弱くなることで、気力が出ない、感情が乏しいといった症状が出現します。

会話が続きにくくなったり、好きな趣味に興味が湧かなくなる人もいます。気力の問題ではなく、脳の機能の問題であるため適切な治療が必要です。

認知機能障害

認知機能障害とは、考える力や判断力、記憶力が低下する症状です。この症状が原因で「考えがまとまらない」と悩む人がいます。

統合失調症では、脳の神経伝達物質の働きに偏りが生じ、認知機能に関わる脳部位の機能を弱めるため認知機能障害が生じやすいです。その結果、脳の情報処理が遅くなり、複数の作業を同時に進める場面でつまずきやすくなります。勉強や仕事の効率が下がり、焦りが増える時期もあるため、周囲の理解と環境調整が必要です。

統合失調症の前兆

統合失調症には、急に妄想や幻覚が始まるケースだけでなく、その前に「なんとなく調子が悪い時期」が続くことが挙げられます。例えば、眠りが浅い、集中力が続かない、気持ちが不安定になるなどです。また、以前は普通に出来ていた家事や仕事が急に負担に感じて出来なくなるなどもあります。

これは脳の神経伝達物質の働きの偏りがゆっくり始まっているためと考えられます。早い段階で相談すれば、症状の悪化を防ぎやすいです。小さな違和感でも専門家へ相談してみてください。

統合失調症の原因

統合失調症の原因は大きく2つに分けられます。

  • 遺伝要因
  • 環境要因

詳しく解説します。

遺伝要因

統合失調症の発症には遺伝的要因が関与していますが、遺伝する病気と断定できるものではありません。家族に同じ疾患を抱える人がいると、リスクはやや高くなります。一親等に患者がいる場合、発症リスクは10倍になります。また、両親が患者の場合は、発症リスクは50%ほどと高いです(1)。ただし遺伝は「発症が決まる要因」ではありません。そのため、「自分のせい」と抱え込む必要はありません。

環境要因

統合失調症は、ひとつの出来事で発症する病気ではなく、生まれつきの体質にさまざまな環境要因が重なって発症すると考えられています。その環境要因は生物的な要因と社会的な要因に分けられます。

 

内容
生物的要因 母体のインフルエンザ感染、風疹、低栄養、糖尿病、喫煙
社会的要因 貧困、低い社会階層、都市部、社会的マイノリティー、いじめ、家庭環境の不安定さ

上記の要因が、統合失調症のなりやすさにつながるものです。遺伝的要因に加えてこのような環境要因が加わると発症しやすくなります。

統合失調症は親の育て方が原因でなる?

統合失調症は親の育て方で発症する病気ではありません。上記で解説した通り遺伝要因と環境要因が複数組み合わさって発症するものです。家庭環境が症状に影響する場面はありますが、育て方そのものが原因ではありません。

例えば、脳が大きく成熟する思春期に強いストレスが続いた場合、脳の調整機能が弱まり、症状が現れやすくなることがあります。しかし、これは育て方の問題ではなく、誰にでも起こり得る生活上の負荷です。統合失調症は本人や家族のせいで起こる疾患ではなく、脳の働きの偏りによって生じる病気です。自分を責める必要はありません。

統合失調症になりやすい人の特徴とは?

統合失調症になりやすい人の特徴を10個紹介します。

  • 生まれつきストレスに弱い傾向がある人
  • 家族に統合失調症などの精神疾患がある人
  • 思春期〜青年期に強いストレスを受けやすい環境にいる人
  • 完璧主義で責任感が強い人
  • 過去にトラウマ体験がある人
  • 孤立しやすく人間関係が安定しない人
  • 睡眠習慣が乱れやすい人
  • 依存的な傾向(薬物・大麻・大量飲酒)を持つ人
  • 感受性が強く、周囲の刺激に疲れやすい人
  • 急激な環境変化に弱い人

これらの体質や性格の傾向はあくまで発症のきっかけにすぎません。特徴があっても必ず発症するわけではないです。自分は統合失調症かもと感じたら早めの相談がおすすめです。

よくある疑問

統合失調症の話し方の特徴はありますか?

統合失調症では、思考のまとまりにくさが話し方に表れやすいです。話の途中で話題が急に変わったり、結論にたどり着く前に別の内容へ移ったりする場合があります。また、本人の中では筋が通っていても、聞き手には関連が分かりにくい表現になることも少なくありません。これらは性格や努力不足によるものではなく、脳の情報整理機能の変化が影響しています。

統合失調症の人が苦手なことは?

統合失調症の人は、情報量が多い状況や臨機応変な対応を求められる場面を苦手としやすいです。複数の指示を同時に受けると混乱しやすく、集中力や記憶力の低下から作業効率が落ちることもあります。また、人の表情や場の空気を読み取ることが難しく、対人関係で疲れやすい傾向もみられます。これらは怠慢ではなく症状の一部です。

統合失調症は自分が原因でなる疾患ではありません

統合失調症には、幻覚・妄想が現れる陽性症状、意欲低下や感情が乏しくなる陰性症状、考える力や記憶が弱まる認知機能障害があります。これらは脳の神経伝達物質の働きの偏りによって生じ、本人の性格や努力とは関係ありません。発症の前には眠りが浅い、集中力が続かない、気分が不安定になるなどの前兆がみられることがあり、早期に相談すれば悪化を防ぎやすいです。

原因は遺伝要因と環境要因が複数組み合わさるもので、親の育て方が直接の原因になることはありません。なりやすい人の傾向として、ストレスに弱い体質、家族歴、強いストレス環境などが挙げられますが、当てはまっても必ず発症するわけではありません。

【引用文献】
統合失調症の予防