睡眠障害

睡眠障害に薬が効く理由とは?種類別の効果と副作用をわかりやすく解説

「夜になっても目が冴え、布団に入っても眠れない」「ようやく眠れても、何度も目が覚めてしまう。」そんな睡眠障害に悩んでいませんか。眠れない日が続くと、日中の集中力や気分にも影響し、「この状態がずっと続くのでは」と不安が強まります。

睡眠障害の治療で用いられる薬は、よい睡眠をサポートします。しかし「依存が心配」「副作用が怖い」と感じ、服薬に抵抗を持つ人も少なくありません。実際には、睡眠障害のタイプや原因に応じて薬を選択すれば、必要以上に不安を抱える必要はありません。近年は依存性がない薬も増えています。

本記事では、睡眠障害に薬が効く理由、代表的な睡眠薬の特徴・効果・副作用を整理して解説します。

監修

医療法人優真会 理事長
近藤匡史

順天堂大学医学部を卒業後、複数の精神科病院で急性期・慢性期・認知症医療等に従事。現在は医療法人優真会理事⾧、なごみこころのクリニック院⾧として地域精神医療の充実・発展に尽力しています。

睡眠障害に薬が効く理由

睡眠障害では、脳内で睡眠を促す神経伝達物質の働きが乱れている状態が多く見られます。本来、夜になると脳は興奮を抑え、自然に眠りへ移行しますが、不安やストレスが続くと覚醒を維持する神経が優位になり、寝つけない、途中で目が覚めるといった症状出現しやすいです。

睡眠薬は、GABAなどの神経伝達物質の作用を高めたり、覚醒を促す物質の働きを抑えたりすることで、脳を休息モードへ導きます。そのため、一時的に入眠しやすくなり、睡眠の質も改善しやすくなります。

ただし、薬はあくまで症状を和らげる対症療法です。根本的な改善には、生活リズムの見直しやストレス対処、認知行動療法などを併用し、薬に頼りすぎない治療を目指すことが重要です。

睡眠障害で用いられる薬の特徴・効果・副作用

睡眠障害で主に用いられる薬は、以下の4種類があります。

  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬
  • 抗うつ薬

それぞれの特徴や効果を以下で解説します。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABA受容体に選択的に作用して睡眠を促す睡眠薬です(1)。主に入眠困難な睡眠障害に使用されます。

非ベンゾジアゼピン系の主な特徴、効果、副作用を以下の表で解説します。

薬剤(商品名) 特徴 効果 副作用
マイスリー 非ベンゾジアゼピン系の代表格で、作用時間が非常に短いです。 入眠促進

健忘
ふらつき
夢遊様行動

アモバン

ゾルピデムより作用がやや強く、苦味が出やすいのが特徴です。

入眠促進 口の苦味・金属味(比較的多い)
眠気
ふらつき
ルネスタ ゾピクロンの改良版で、効果が安定し、苦味がやや軽減しています。 入眠促進
睡眠維持
口の苦味(アモバンより少なめ)
翌日の眠気


非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系より選択的に作用するため、筋弛緩作用、抗不安作用、ふらつきなどの副作用のリスクが低いです。また、依存や離脱症状も少なくなっています(1)。

メラトニン受容体作動薬

メラトニンは、夜になると分泌される睡眠を促すホルモンです。メラトニン受容体作動薬は、このメラトニンに作用して、体内時計を正常化します。

以下で具体的な特徴や効果、副作用を解説します。

薬剤(商品名) 特徴 効果 副作用
ロゼレム メラトニン受容体を刺激し、自然な眠気を促します。依存性や耐性がほぼなく、長期使用が可能です。 入眠促進 頭痛
めまい
倦怠感

メラトニン受容体作動薬は、依存性がほぼなく耐性が付きにくいため、比較的安全性が高い薬です。また、体内時計を整えるという点で自然に近い眠り方が可能です。ただし、即効性は弱いため、強い不眠には効果が弱いかもしれません。


オレキシン受容体拮抗薬

オレキシン受容体拮抗薬は、脳内で覚醒を維持する物質であるオレキシンの働きを抑え、覚醒をオフにする効果を発揮します。脳を鎮静させる睡眠薬とは異なり、起きていようとする力を弱める睡眠薬です。

各薬剤の特徴、効果、副作用を以下で解説します。

薬剤(商品名) 特徴 効果 副作用
ベルソムラ 世界初のオレキシン受容体拮抗薬です。高齢者にも使用しやすい薬です。 入眠困難の改善
中途覚醒の減少
睡眠時間の延長
翌朝の眠気
頭痛
悪夢・金縛り様症状(まれ)
デエビゴ よく処方される薬で、オレキシン遮断作用が比較的強いです。 入眠困難に特に強い
睡眠維持効果もあり
眠気
悪夢
まれに金縛り
クービビック 依存性がほぼなく、持越し効果が少ないです。 依存性がほぼなく、持越し効果が少ないです。
入眠・中途覚醒改善
日中の眠気改善
眠気
頭痛
悪夢

睡眠薬では、ふらつきや転倒などのリスクもありますが、オレキシン受容体拮抗薬はこれらの副作用が少なく生活への影響が抑えやすいです(2)。

抗うつ薬

睡眠障害では、補助的に抗うつ薬が用いられる場合があります。例えば、強い不安感や緊張が原因で不眠になっている場合などです。このようなケースでは、抗うつ薬が用いられることがあります。

抗うつ薬の睡眠障害に対する効果を以下で解説します。

薬剤(商品名) 特徴 効果 副作用
三環系抗うつ薬 強い鎮静作用があり、中途覚醒や早朝覚醒にも効きやすい薬です。 入眠困難の改善
中途覚醒の減少
抑うつ・不安の緩和
口渇
便秘
眠気
立ちくらみ
四環系抗うつ薬 強い鎮静作用がありますが、依存性はほぼありません。 入眠困難
中途覚醒
強い不安を伴う不眠
強い眠気
体重増加
口渇
倦怠感
NaSSA 不安を抑えることで、眠くなる状態を作ります。 入眠・睡眠維持
不安・抑うつの改善
食欲増進
強い眠気
体重増加
だるさ

睡眠障害に対して抗うつ薬を用いるかは医師の判断により異なります。基本的には、医師の治療方針に従うことが大切です。

睡眠障害の市販薬

市販薬では「睡眠改善薬(指定第2類医薬品)」がドラッグストアなどで売られています。この薬は、抗ヒスタミン成分を配合し、脳の覚醒を抑えて寝付きをサポートします。精神科や心療内科で処方される薬とは作用が異なりますが、軽度の不眠に対して手軽に使用出来る薬です。

睡眠改善薬は、一時的な不眠症状を緩和するものです。そのため、慢性的な不眠や重度の不眠症などを抱えている場合は、精神科や心療内科を受診して医師から処方された薬を飲むのが効果的です。

睡眠障害の薬に関してよくある質問

睡眠薬は一生飲み続ける必要がある?

睡眠薬は一生飲み続ける必要はありません。睡眠障害を引き起こした原因が改善したり、睡眠障害の背景にあるストレスが軽減すれば、薬の必要性は徐々に減っていきます。自己判断で中断すると不眠が悪化することがあるため、必ず医師と相談しながら段階的に調整することが大切です。

睡眠薬を飲み始めるとやめられなくなる?

睡眠薬を飲み始めるとやめられなくなるのでは、と不安に感じる方は少なくありません。睡眠薬の種類のうち一部は依存性がある薬もあります。しかし、医師の管理下で正しく使用していれば、必ずしも依存するわけではありません。

また、近年は依存性が低い薬も多く、不眠の状態や年齢、生活背景に応じて処方されます。問題となるのは、自己判断で量を増やしたり、長期間漫然と使い続けたりするケースです。症状が改善すれば減量を進めることも可能であり、薬に頼り切りになる前に治療計画を見直すことが重要です。

薬を飲む以外で治す方法はある?

睡眠障害は、薬以外の方法でも改善を目指せます。代表的なのが認知行動療法と睡眠衛生の改善です。認知行動療法では「眠れないと明日はダメになる」といった不安な考え方を修正し、睡眠への過度な意識を和らげます。一方、睡眠衛生の改善では、就寝時間を一定にする、寝床でスマートフォンを見ない、カフェインを控えるなど生活習慣を整えます。これらを継続することで、薬に頼らず眠れる状態を目指すことも可能です。
睡眠障害に対して処方される薬は幅広いです
不安やストレスが続くと覚醒を保つ働きが強まり、寝つけない、途中で目が覚めるといった症状が起こりやすくなります。このような症状に対して、脳内の神経伝達物質の乱れを整えるために睡眠薬が用いられます。

主な睡眠薬には非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬があり、それぞれ効果や副作用、依存性の程度が異なります。近年は依存性の低い薬も増えており、症状に応じた選択が重要です。また、不安や抑うつが強い場合には抗うつ薬が補助的に使われることもあります。

薬は対症療法であるため、生活習慣の見直しや認知行動療法と併用し、最終的には薬に頼りすぎない治療を目指すことが大切です。


【引用文献】

  1. 病気とくすり 不眠症に用いられる薬剤
  2. オレキシンの神経科学と創薬